PROJECT13

2021.06.17

つながりを可視化し、雑談が生まれるオンラインコミュニケーションツールの可能性


新型コロナウイルス蔓延によるリモートワーク導入企業の増加に伴い、大きく需要を伸ばしたオンライン会議ツール。自宅からミーティング参加で働き方の自由度が増した一方、顕在化したのがチームとしての一体感の欠如です。雑談が減ったことでコミュニケーション不足に陥る場面が増えました。
この課題と向き合い、「リアルより話しやすいオンラインワークスペース」として2020年夏にリリースしたのが「NeWork(ニュワーク)」です。そのコンセプトが話題となりましたが、実はリリースからわずか数ヶ月でフルリニューアルを決断しました。その裏側と、徹底的にユーザー視点にこだわるNeWorkチームが考える、これからのオンラインワークスペースについてお伝えします。

リモートワークのインサイトから雑談ができるコミュニケーションツール

NeWorkのプロジェクト発足は2020年6月。同年4月には1度目の緊急事態宣言が発令され、“オフィスで顔を合わせて仕事をする”という従来の働き方が実現できない状態が続いていました。「新たなビデオコミュニケーションサービスをつくらなければ」という課題を抱えていたものの、急務ではなかったコロナ禍以前。そこから一変して、早急にサービスを立ち上げる必要性を感じたといいます。

「リサーチやインタビューによって既存のオンライン会議サービスで解決できない問題点を突き詰めていったのですが、プロトタイプをつくっていく段階で、私たちが求めているものはいわゆる“オンライン会議サービス”ではないことに気付いたんです」(坂内恒介/NeWorkプロダクトマネージャー)

議論を深めるうちにたどり着いたのは、「リモートワークによって失われたのは“人の気配”ではないか」という結論。いつ、どこで、誰が、何をしているのかわからなくなったことでコミュニケーションが生まれにくくなり、結果としてチームの一体感が損なわれているのではないか。そのインサイトを得たことで、「リアルより話しやすいワークスペース」というコンセプトが生まれました。

共創が“NTTコムらしくない”サービスの鍵に

開発にあたりポイントとなったのは、従来のサービス開発チームのみならず、NTTコミュニケーションズ内のデザインスタジオ・KOELや、クリエイティブファームとの共創。ある意味「NTTコミュニケーションズらしくない」と言われることもあるNeWorkは、社内外の知見を生かしながら、コンセプトやUI、UXを設計してきました。

また、もう一つ特筆すべきがわずか3ヶ月でリリースまで漕ぎつけたスピード感のある開発です。比較的大きな規模の企業では、開発はもちろん、承認フローや意思決定に関わる人数が多くなるため、これほど短期間で一つのプロダクトをリリースするのは至難の業。アジャイル開発の一つであるスクラム開発(※)を採用したことに加え、コロナ禍という状況も開発に拍車をかけました。
※スクラム開発の特徴は、①プロダクトへの要望を優先順位ごとに並べ変え、その順に機能をつくる、②固定の短期間(1~4週間程度)の単位で開発を区切り、その中で計画を立てる、③プロジェクトの状況や進め方に問題がないか、メンバー同士で毎日確認しあう、④作っている機能が正しいかどうか、定期的に確認の場を設ける。

「チーム編成も開発手法も今までに経験したことがないものでしたが、会社としても変わっていかなければならないという危機感がありました。ただ、開発期間がこれまでと比較して圧倒的に短く、競合があまりにも強大。付け焼き刃のアイデアでは太刀打ちできないというプレッシャーもありました」(坂内/NeWorkプロジェクトマネージャー)

NTTコミュニケーションズにとっても、コロナ禍における環境の変化はとても衝撃的でしたが、手探りながらも会社として掲げる「人と世界の可能性をひらくコミュニケーションを創造する。」というミッション体現するようなサービスをつくることに注力しました。

リモートワークでの会話を促すつながりの可視化

試行錯誤の開発を経て2020年8月末にβ版をリリース。「バブル」と呼ばれるトークルームに入ることで、バブル内の人と気軽に雑談できる仕組みで、会話を立ち聞きできる「聞き耳」機能も搭載しています。

レポートイメージ 2020年8月末β版リリース当時のUI。

これまでにない形のオンラインコミュニケーションツールとして好評を博し、リリース前のテストユーザーを公募したところ、登録者数はわずか1ヶ月で1万人を超えました。

リリース後はテストユーザーから次々に届くフィードバックの一つひとつに向き合い、細かなバージョンアップを繰り返しましたが、メッセージによるフィードバックに留まらず、ユーザーインタビューの機会を設けることもありました。

「例えば『チャット機能を搭載してほしい』という声があったとき、実際にチャット機能を実装するとなると、何通りもあるスタイルから一つを選ぶことになります。どのような形がNeWorkにとって最適なのかを考察していく必要があります。そのために欠かせなかったのが、細かなユーザーインタビュー。NeWorkの公式Twitterからユーザーにメッセージを送ってインタビューをお願いすることもありました」(原田結衣/NeWorkプロモーション担当)

「ユーザーインタビューをしてみると、こちらが想定している以上にいろんな使い方をしていることがわかります。雑談する場としてバブルを活用するだけでなく、オンラインでつながったままただそこにいて各々が作業している、“雑談しない場”としても使われていることがあって。そういったシーンは想定していなかったので、私たちにとっても思わぬ気づきになっています」(田中亮/NeWorkデザイナー)

ただ、そうした声を聞いていくなかで大きな問題にも気づきました。β版を改善していくだけでは対応できないことが出てきたのです。

「β版はコロナ禍におけるニーズに応えるため、早期にリリースすることを最優先していたので、長期的な運用を考えたときに十分なスペックではありませんでした。長期的に運用していくことを考えるといつかは向き合う課題だったのですが、想定以上にユーザーの皆様から声を寄せていただけたことで、思い切ってβ版リリースから数ヶ月でフルリニューアルするという結論に至りました。」(中見麻里奈/NeWorkプロモーション担当)

フルリニューアルを機に進化する、今後のNeWorkの可能性

NeWorkが再スタートを切ったのは2021年4月。心地よい気分で会話できるよう、従来のやわらかさや優しさを残しつつ、鮮やかなカラーやグラデーションを用いてクリーンで親しみやすいデザインへ改良したり、ルームに来てほしい人に声をかけられる呼び出し機能を追加したり。

レポートイメージ 刷新後、最新(2021年6月現在)のUI。

レポートイメージ 呼び出し機能はユーザーからのリクエストで生まれた。

また、ユーザーが自身の“今”を表すモード機能においては各モードの名称を変更。これまで「オープン・ワーク・ゾーン」の3つのモードだったものが、「ウェルカム・フラット・ゾーン」から選択できるようになりました。誰もがわかりやすい名称やデザインでつながりを可視化し、今まで以上に自分の状態を相手に伝わりやすくなるように設計されています。

レポートイメージ 相手のモードが可視化されていることで、話しかけるタイミングを窺える。

β版を開発したときは仮説をもとに開発を進めていましたが、リニューアルにあたってはユーザーの声が一番の頼り。ユーザーの生の声をもとに改良を進めることでより使いやすく、自由で多様な働き方に寄り添うコミュニケーションツールへと進化を遂げています。

「今後はオフィスというリアルな場との共存についても考えたいと思っています。これまではリモート環境を前提にしていましたが、オフィスにいる人もリモートワークをしている人も集まってコミュニケーションを取る場として、NeWorkを役立てたいと考えています。個人的にはもう少し雑談を生むきっかけをつくっていきたいですね」(坂内/NeWorkプロジェクトマネージャー)

「今は、リモートワークが普及したことによって、物理的な距離があるパートナー企業との会話も気軽にできるようになった状況。他社との共創におけるコミュニケーションでも、NeWorkは力を発揮できると思っています。
しかも最近では、『学会で利用したい』といった声や、『学校に行けない子どもたちの集いの場として利用したい』といった要望をいただくことも増えています。
オンラインであれば、オフラインのように人数制限もありませんから、より多くの人に発信できます。NeWorkを通じて、オンラインだからこその可能性を広げていきたいですね」(中見/NeWorkプロモーション担当)

レポートイメージ (左上から時計回りに)中見麻里奈(NeWorkプロモーション担当)、田中亮(NeWorkデザイナー)、原田結衣(NeWorkプロモーション担当)、坂内恒介(NeWorkプロジェクトマネージャー)

ビジネスシーンのみならず、社会課題の解決にも寄与できる可能性を持つNeWork。今後も試行錯誤を重ねながら、ユーザー視点での開発は続きます。「うちの会社でこんな使い方はできないか?」といったご意見やご要望があれば、こちらからお寄せください。
NeWorkを使ってみたご感想や「こんな機能があれば嬉しい」といったご要望は、フィードバックフォームNeWork Twitterでも受け付けています。